モノづくりの先進地・名古屋をデジタルコンテンツの聖地に。集まれ、モーションアクター!

株式会社活劇座 代表取締役
古賀 亘氏
株式会社スピード 代表取締役
岩木 勇一郎氏

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世界を魅了するモーショングラフィックには
日本唯一のモーションアクター専門会社の存在があった。

Q.お二人はどのようなお仕事をされているのですか?

株式会社活劇座 古賀氏(以下、古賀):僕が代表を務める活劇座はモーションアクター専門の会社です。例えば3D格闘ゲームのキャラクターが、パンチしたりキックしたりしますよね。キャラクター自体はもちろんデジタルデータによって形作られます。でもその動きは、モーションキャプチャーという特殊な撮影方法で、人間の動きをデータとして収録して、そのデータをベースにキャラクターの動きを作っているんです。僕自身も、CGキャラクターの動きを担当するモーションアクターとして活動しています。

株式会社スピード 岩木氏(以下、岩木):株式会社スピードは、3DCG・VFX・2D等の技術を活かしたCG映像制作・企画等の仕事をしています。ゲームや映画等の3DCGが多く、そこに登場するキャラクターの動きの基となるものを古賀さんたちにお願いしています。いわば一緒に作品をつくるチームですね。活劇座さんが演じたモーションキャプチャーデータを受け取ってキャラクターに流し込み、CGアニメーションを制作する。この工程を経ることで、流麗なアニメーションにすることができます。

Q.国内で、モーションアクター専門の会社は他にはないと聞きましたが。

古賀:はい。モーション収録におけるモーションアクターのコーディネートと、アクションやダンスのコーディネートを専門としている会社は、国内で弊社だけです。

岩木:古賀さんの会社はとても専門性が高い。たとえばボクシングだったら、本物のボクサーの動きをアニメーションに盛り込めば良いかと言えば違います。プロの動きとCGにした時の「映える動き」は違うんです。漫画やアニメの「かっこいい」動きを表現するには、特殊なノウハウが必要です。

古賀:動きの特徴をとらえることはもちろん、例えば時代劇のシチュエーションなら、この時代でどんな動きが自然か? という時代考証もしながらつくります。巨大なキャラクターを演じることもありますし、人間以外を演じることもあります。アクション系の仕事ばかりではなく、ファンタジー系の作品、可愛い女性キャラクターが活躍する作品も多くあり、ジャンルによってアクターに求められる演技やアクションは異なります。今は昔と比べて収録システムの精度が飛躍的に上がり、アクターの表現がダイレクトに伝わるようになりました。顔の演技は実写で動画撮影しキャラクターに反映させることが出来るようになったので、セリフを一文字も間違えられないなど、アクターに対する要求も高くなってきていると実感しています。

圧倒的な供給不足にあるモーションアクター。
その問題を、名古屋から解決していく。

Q.モーションアクターの仕事は、あまり一般の方には知られていない職業だと思いますが、実際のニーズはどれぐらいあるものなのでしょう?

岩木:たとえば、スマホやVRなど、どんどんデバイスもコンテンツも増えている。そして20年前のゲーム機のキャラクターと、今の3Dを比べたら、滑らかさは雲泥の差ですよね。その差だけを見ても、モーションキャプチャーの仕事は格段に増えていることが分かります。アクターも足りないし、スタジオも足りない。これは日本だけでなく、世界的な流れです。業界全体で枯渇しています。

古賀:実際、その需要の大きさは増え続ける海外からのオファーにも現れています。もちろん海外にもモーションアクターはいます。それでも活劇座が呼ばれるのは、「アニメーション栄えする演技やアクションを理解している」アクターが求められるからだと思います。たとえば歌舞伎のように見得を切る要素が入った動きは、海外の人がやっても何かが違うんです。他にも日本のアニメやゲームに登場する可愛いらしい女性キャラクター特有の動きなど、その文化圏で育ったアクターにしか自然に表現できない動きというものがあるので、このニーズは当分増え続けると感じております。

Q.そのニーズに応えるために、今春にスタジオとスクールを開設するとお聞きしました。しかも名古屋なんですよね?

古賀:はい。モーションアクターの供給不足と、僕自身も年齢を重ねてきたこともあって、後任を育てていかなければ……という考えは数年前からありました。でも最初は東京で進めるつもりだったんです。やっぱり先生も生徒も揃いやすいので。でもある時、岩木さんから「東京以外に選択肢はありませんか? たとえば名古屋とか」と話を振られて、考えてみたんですよね。大阪にもお付き合いのある会社が沢山あって、リニアも走りますし東京との間で立地としてとても面白いなと。名古屋にスタジオや人材があれば、活用したいというニーズはあるんじゃないかと思ったんです。

あと、僕の故郷であることも大きかったでしょうね。元々名古屋でアクションを勉強して東京に出てきたから、今でも周りに名古屋出身の仲間がたくさんいるんですよね。僕らはみんな、名古屋に活躍の場がなくて東京に出てきた。でも名古屋に活躍できる場があれば、地元で暮らしながら東京や大阪の仕事ができる。だったらここにスクールを作ることに大きな意味があるな、と思いました。なので、名古屋を拠点にすると決めて、これを機に本社も横浜から移転しました。

岩木:「なぜ名古屋に商業用のスタジオがないのだろう?」「あったら活用したい」という声を聞くこともしばしば。確実にニーズはあると考えています。優秀なアクターが育つ名古屋で……という選択がスタンダードになるといいですよね。それと、名古屋の既存産業とのマッチングの可能性も重要なポイントです。モーションキャプチャーの技術はエンターテインメント以外の領域にも活用されつつある。日本の中でも突出したモノづくりの強さがある名古屋なら、エンターテインメントに限らずに柔軟に技術展開できるのではないか、と僕らは考えています。

進化し続けるデジタルコンテンツ産業。
名古屋はこれからが面白い!

Q.名古屋での既存産業への展開に可能性を感じられているということですが、もう少し詳しく教えてください

岩木:名古屋は製造業が強い。いわゆる「手に取れるモノづくり」に強い土地です。そこにプラスして、デジタルコンテンツ・ソフトウェア産業の機運も高まっていることに、大きなチャンスを感じます。
たとえば、3DCGの精度が上がった結果、製造業の金型がCGになったり、医療機関で活用されたりもしています。僕たちが生み出す3DCGの精度は加速度的に高まっているので、今後は確実に既存産業と結び付くと考えています。

それと、元々名古屋はデザイン等の教育が活発で大学や専門学校の数が多く、優秀な人材が生まれる土壌があります。
さらに補助金制度の充実もあり、デジタルコンテンツ・ソフトウェア産業の会社も増えていますので、学び、働く地域としての魅力も打ち出していきたいですね。

モーションアクターの裾野を広げ
名古屋を人材輩出地域へ。

Q.今春にオープンするというスクール事業についても教えてください。これはプロフェッショナル志望者だけの学校なのでしょうか?

古賀:もちろんプロ志望の方の応募は大歓迎なのですが、もっと門戸を広げてモーションアクターという仕事そのものを知ってもらいたいという思いがあります。例えばエクササイズとしてバク転教室などのオープンスクールに通っているうちに、モーションアクターという仕事に興味を持った、という方も出てきてほしいですね。

この仕事は、運動神経がずば抜けていないとダメだと思われがちなのですが、実はそんなことはありません。想像力や表現力とか、デジタルコンテンツへの理解とか、現場での対応力、そういったものの方が圧倒的に重要だし経験の積み重ねがモノをいいます。この辺りは、僕がこれまで培った「虎の巻」を伝授していきます。次の人にバトンを渡せたら、僕はいつでも身を引きますよ(笑)。

岩木:僕らも全力で走ってきて、このノウハウを継承していかないといけないのではないか、と思ったんですよね。

Q.最後に、どんな人にこの業界に来て欲しいか教えてください

古賀:プロになろうという方にお伝えしたいのは、モーションアクターの仕事は完全な専門職で、プロフェッショナルでなくてはならないということです。芸能界でスターを目指す人の下積みの場ではありません。また先ほどお伝えしたとおり運動能力がすべてでもない。大切なのは「好き」や「やりたい」という強い気持ち。「ゲームやアニメのキャラクターを演じてみたい!」という情熱こそが重要だと僕は思います。未経験でも、そういった熱意を持ち、モーションアクターとしての経験値を積み重ねることに喜びを感じられる人と一緒にこの業界を盛り上げていきたいし、スクール事業を通してそんな人との出会いに恵まれたら嬉しいですね。

僕らは、この名古屋から世界に打って出ようとしています。このスクールを卒業した生徒が世界中で活躍して、世の中にモーションアクターの存在を知らしめてほしい。そしていつか名古屋が、「モーションキャプチャーといえば名古屋だよね」と言われるような、そんな聖地のような場所になったら最高です。