若手でも、ベンチャーでも、ハートフルに応援してもらえる。そんな名古屋のお手本のひとつを目指して。

株式会社CURUCURU 代表取締役CEO
時田 由美子氏

  • TOP
  • INTERVIEW
  • 若手でも、ベンチャーでも、ハートフルに応援してもらえる。そんな名古屋のお手本のひとつを目指して。

ゴルフはコミュニケーションツール。
起業の志にピタリとハマった。

Q.CURUCURU(キュルキュル)という社名は個性的ですね。

「キュルキュル」というのは、ゴルフのスピンボールのことです。スピンボールは「コントロールショット」とも呼ばれていて、女性が、自分自身で自らの人生をコントロールできる社会にしたいとの想いを込めて付けました。

Q.ゴルフというテーマで起業をされたのには、どのようなきっかけがあったんですか?

元々「女性の人生を豊かにするIT事業で起業したい」という思いが先にありました。そんな中、たまたま始めたゴルフが、こんなにもフラットにたくさんの人と繋がれるツールなんだと感動して。「誰もが孤独にならない人生を送って欲しい」という自分の志にピタリときました。しかし、若い女性には始めるハードルが高いという課題があったので、そこを変革したいと思ったんです。

Q.ゴルフを単なるスポーツではなく、コミュニケーションツールとして捉えたんですね。

ゴルフって基本4人でプレーをするんですが、メンバーが足りないときは「誰かおいでよ」と募る文化があって。そこで出会った人たちが気持ちがいい自然の中で1日一緒にコースを回ると打ち解けていくんですよ、ほんとに。それを繰り返すとゴルフ仲間が増えていく。ゴルフは、性別も年齢も問わないフラットな知人友人がつくれる最高のツールだと思っています。
ただ、女性やビギナーが常に後回しにされている構造もありました。そこで、女性や若年層のニーズにフォーカスした情報・ファッション・道具・仲間や機会を増やすサービスが必要と考え、ネットを使えば名古屋でもできると挑戦しました。現在は女性ゴルファーの10人に1人以上には何らかのサービスを使っていただいている状況です。

理不尽への怒りがエネルギーの源泉。
友達・家族・仲間と心豊かに生きるサービスを作る。

Q.もともと起業がしたかったとのことですが、そう考えるきっかけはあったのでしょうか?

起業は、子どもの頃から決めていました。私が4歳の時に父が亡くなり母子家庭になって、子どもながら、どうしてお母さんがこんなに苦労しなきゃならないんだろうと理不尽さを覚えました。愛する子供を育てるために働く場所、偏見、相談できる仲間…、インターネットの繋がりや多様性が少ない時代だとしても、誰かが孤独に闘う社会はおかしい、日本は間違っていると本気で思っていました。でも同時に、母が参加していたママさんバレーの人間関係に救われている姿も印象に残っていて。大変な境遇でも、仲間がいたら乗り越えられる。誰でもそのような関係性が築ける社会であってほしいし、それによって輝いた人生を送れる女性が増えたらいいな。そんな気持ちが私の起業のベースにあります。

Q.ゴルフをテーマにスタートされて、今はまた次の女性向け事業にも取り組んでおられるのですよね。

そうなんです。色々なサービスができる会社を創りたいと思って始めました。ゴルフ事業で土台ができたので、次は難易度が高くても社会にとって絶対になくてはならない事業にチャレンジしたいと思いました。今取り組んでいるのは、女性の妊活をサポートする事業です。女性活躍の裏で、不妊で悩む方がこの10年間で倍増していることが社会的な問題となっています。通院にはお金も時間も精神的な力も必要で、女性は1人で抱え込みがちです。そういった妊活女性のためのSNSを立ち上げ、自分と似た人と繋がれたり、何をしていいかわからない妊活から分かる妊活へ、行動を後押しする空間に育てています。

Q.ライフイベント事業という名前の通り、これから事業の柱を増やしていかれるんですか?

妊活という領域はイノベーションの難易度が高い分野です。しばらくはここに注力して、社会に貢献する実績を積み上げていきたいです。弊社のビジョンは「友達・家族・仲間と心豊かに生きるサービスを作る」です。だからユーザーさんが「このサービスがあったから自分の人生が変わった」と言えるものにしないと意味がない。ユーザーさんへの提供価値をそこまで上げる覚悟で続けていきたいです。

昔と比べて、今はすごく起業がしやすい。
名古屋の地を生かす企業がもっと増えて欲しい。

Q.名古屋が本社でありながら、時田さんご自身は東京にお住まいがあるとお聞きしました。そのような選択をされている理由を聞かせてください。

起業家として経営者として、情報感度や人脈を広げるために生活は東京を拠点にしています。しかし、東京オフィスと名古屋本社をチャットやWEB会議でつないだり、日帰り出張もしやすいので、事業そのものは東京ではなくてもできることが増えています。特にEC事業では、倉庫や作業スペースなどキャパシティが必要なので、東京に本社を移しても都心と郊外に拠点がわかれてしまうやりづらさがあります。またコストの面だけではなく、一緒にやってきた仲間が名古屋にいるので、彼ら彼女らに安心して働きつづけてほしい思いもあります。名古屋の人材は魅力的なので、今のところ東京に本社を移す理由が見つかりません

Q.時田さんご自身は、名古屋への愛着をお持ちですか?

愛着はあります。ただ、名古屋は都市の機能としてもとても素晴らしいものを持っているし、経済力もあって、学校や病院も充実していて暮らしやすい場所なのに、いざ働こうとなると急に選択肢が偏ってしまって魅力が半減してしまうんです。そこに悔しさがあります。だって生きていくのには、住みやすさも大事だけれど、働く楽しさとか働く上での成長も大切ですよね。その価値がうまく見えてこないから、名古屋は働く場所として選ばれない。たぶん私は、性格上「理不尽なこと」が嫌いなんですよ(笑)。選べないとか、選択肢がないとか、そういう局面に出会うと「なんとかしなくちゃ!」ってエネルギーが湧いてくる。将来、名古屋が理不尽な環境にならないようにしたい。たとえば、介護のために名古屋にUターンして働かなきゃならない場合も、好きな仕事に就けるような。ちゃんと個人の多様な選択肢に応えられる、そんな成熟した都市に変わっていくといいなと思っていますし、名古屋にはそれが可能だと感じています。名古屋を働く場所として選ばれる街にしたい、ということも名古屋に本社を置き続ける理由の一つですね。

Q.創業当時と比べると、名古屋は変化したと感じますか?

ものすごく変わりました。まず、起業家にとって恵まれた環境になったと思います。私が起業した頃は、相談相手と呼べる経営者が名古屋にはいませんでした。ベンチャー企業が少なかったり、そもそも起業する人も少なかったので。壁にぶちあたった時とかフェーズごとに変化する課題に対して、「自分はこうしたよ」という生で聞ける一次情報が得られないんです。二次情報はたくさんあっても、そこにはまったくリアルさがない。困った時に、多様な助言の中から試行錯誤することでそこを打破して……という繰り返しで会社は成長していくのに、先人がいないのは本当にツラかったですね。私が東京に拠点を持ったのは、そのデメリットを解消するためでもありました。でも今は、ずいぶん変わりましたね。この地域で投資を受けたり、上場するベンチャーもでてきましたし、相談できるコミュニティも増えています。

名古屋で成功事例を作りたい。
今がそのチャンスだと思う。

Q.起業家の視点から、名古屋は今どんな潮流の中にあると感じますか。

感じることは2つあります。1つは、大企業からベンチャーにいったり起業したりする人が、ここから一気に増えるタイミングだと感じます。 少し前はベンチャーに行くのはアウトローというか(笑)冒険的な人が多かったのですが、近年、東京で大企業出身の起業家や経営層が活躍してる背景もあって、この地域でも、そんな生き方もいいな、将来を考えて大企業を飛び出そうかな、という価値観が育ち始めています。これまでは、ベンチャーの経営層や専門職は東京以外での採用が難しい、人材面で本社を東京に移した方が早いなどと言われ続けてきましたが、名古屋は優秀な人が大企業の中にたくさんいるエリアなので、面白くなると思います。
2つ目は、名古屋市をはじめ、この地域全体として、名古屋も進化していかなければという追い風があり、多様なベンチャーが盛り上がってきていることです。 名古屋は人も企業も気風として「堅実」と言われますが、これからの時代に必要なのは変化を作っていったり、社会の変化に柔軟に対応できるよう凝り固まった状態をつくりすぎないことです。人間が自分と違う価値観の人と接触することで成長するように、他のエリアから多用な業種や職種や価値観を取り入れて、いろいろなものを混ぜてカオスな状態をつくることで街も人も成長していくと思うのです。そういう意味で、新しいものや多様性を受け入れ始めた今の名古屋が、すごく面白いです。

Q.名古屋は堅実だけど新しい人を応援する風土がある、という声も聞きます。

それは、ここ2〜3年で私自身も感じています。東京では埋もれてしまうサイズでも、名古屋では存在を見つけてもらえて、応援してもらえる。ハートフルさがあります。東京で一歩前に飛び出そうとすると、けっこうドライな対応をされがちなのだけれど、名古屋だと一生懸命話を聞いてもらえたり、みんなで応援しようよ、という風潮がある。最近はそれが強まっている感覚もあって、すごくいいなと思います。

Q.名古屋でこれから挑戦していきたいことはありますか?

自分の中で「名古屋で成功事例を作りたい」という責任感のようなものがあります。場所にとらわれないBtoCのWebサービスをしている企業として、地方でも起業に成功して社会に貢献できることを証明したいと思っています。名古屋はどうしても製造業にフォーカスが当たりがち。でも、人材も価値観も選択肢も多様化している今、産業界のパワーバランスを崩すようなことがあってもいいのではと思っています。名古屋もカラフルな街なんだ、ということを表現していきたいです。製造業だけではなく、いろんな業界のいろんな職種がもっと増えて、多様な価値観を活かして働ける土地になっていってほしい。その時、私たちの会社やサービスが選択肢の一つになれたらいいですよね。