町工場から世界最高の製品を作る。その根底には世界トップクラスの仕組みづくりがあった。

愛知ドビー株式会社 代表取締役社長
土方 邦裕氏

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イメージを持って、事業と組織をつくる。

Q.御社の事業内容をお聞かせください。

鋳物ホーロー調理器ブランド「バーミキュラ」の製造・販売をしています。愛知ドビーは、1936年に名古屋市で創業した老舗鋳造メーカーです。創業当時は「ドビー機」という繊維機械のメーカーでした。繊維産業が縮小しドビー機の需要が減ってからは工業部品の下請け製造を行っていた時期もありましたが、お客様の声が直接届かない下請けの立場では、職人たちの表情も暗く、モチベーションが下がっていました。
なんとか職人たちに誇りを取り戻してほしいと、私と弟(副社長 土方智晴氏)が愛知ドビーに入社し、「町工場から世界最高の製品を作りたい」という思いのもと、メイド・イン・ジャパンの鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」をつくりました。「手料理と、生きよう。」をブランドスローガンに掲げ、素材本来の味を楽しむライフスタイルを通じて、世界中に手料理のある暮らしの素晴らしさをお届けすることがバーミキュラブランドの使命です。

2020年4月に発売した新商品「バーミキュラ フライパン」は、受注台数11万台を突破(2020年10月末時点)。「2020年度グッドデザイン賞」の受賞、「JIDAデザインミュージアムセレクションVol.22」に選出されるなど、高く評価されている。

Q.新たなビジネスとして「バーミキュラ」ブランドを立ち上げていくにあたり、ご苦労などはなかったのでしょうか。

ずっと行っていたBtoBビジネスをBtoCに転換したことでしょうか。それまで自社で行っていなかったマーケティングやPRを実施するにあたり、新たな人材を探し部署を立ち上げる必要がありました。参考にできるような同規模のメーカーが近くにはなく苦労しましたが、自分たちで人材や組織のイメージを持って採用活動を進めていきました。例えば、シェフを雇い「バーミキュラ」の特長を最大限に引き出したオリジナルレシピを開発したり、メーカーとしては珍しい人材を雇っています。幸い「バーミキュラ」の世界観に共感してくれる素敵な人材に恵まれることができました。みんな「バーミキュラ」が好きなので情熱もあり、結果として成果を上げてくれていますね。

トップクラスのものづくりを支えるのは、仕組み。

Q.事業が拡大されても、名古屋に本社を置きビジネスを続けられるのはどういったお考えからでしょうか。

事業拡大に伴って拠点を増やすことは将来的にあるかもしれません。でも本社を動かすつもりはないですね。工場がここにありますので、他の部門も近くにあったほうが連携しやすい。私自身が技術者として工場に顔を出すこともあります。
名古屋は創業の地でもあるし、ものづくりが盛んな街なので、良質な素材や腕のいい職人、そして情報が集まっていることが最大の魅力です。PRや販売促進の部門を東京に設ける企業もあると思いますが、東京からでないと情報発信できないような時代ではないですよね。

Q.ご自身も製造の現場に入られたり、ものづくりへの思いを非常に強くお持ちと感じられました。この地域のものづくりが発展したのはどういった特長からだとお考えですか。

仕組みづくりが上手いからだと私は考えています。もちろん職人の技術はベースにありますが、高品質の良い製品を大量につくり上げるには仕組みが必要です。アートのように最高傑作を一つ生み出すことは当然難しいと思いますが、最高傑作である製品を大量につくることにはまた別の難しさがあります。「バーミキュラ」でも月に2万個ほど製造していますが、その量を安定的に高品質でつくり上げることに力を注いでいます。
名古屋のものづくり企業には、その高品質の製品を大量につくる仕組みやノウハウが蓄積されています。これは世界トップクラスだと思っています。この仕組みづくりやノウハウをサービス業など他の業種にも応用させたら、すごいものができるかもしれませんね。異業種の人材が交流してノウハウを伝え合う機会があれば、そういったことも名古屋で実現してくるのではないでしょうか。

中川運河から、食とアートで名古屋を盛り上げる。

Q.名古屋の街に対する今後のビジョンがあればお聞かせください。

先ほどお伝えしたように、名古屋のものづくりは世界トップクラスだと思っています。でも観光などではまだまだポテンシャルがありますよね。食やアートに力を入れて観光も盛り上がれば、人が集まって、そこからまた新しいアイデアが生まれてくると思います。

私たちもこの地で最高の製品をつくりながら、ブランドを体感してもらえる「バーミキュラ ビレッジ」から魅力の発信を続けていきます。
「バーミキュラ ビレッジ」のある中川運河沿いを発展させ、観光の面でも街を盛り上げる力になれたら嬉しいですね。
中川運河沿いにレストランや美術館が並んで食とアートの街になったら、名古屋港に大きな観光船が着いたり、海外からもたくさんの観光客が来てくださるのではないでしょうか。