大正時代から名古屋に根を張る「乃一」の挑戦。 ニーズに応えて総合リフォーム企業へ。
株式会社乃一 代表取締役
乃一 剛英氏
- 補助金活用
- 名古屋創業
- TOP
- INTERVIEWS
- 大正時代から名古屋に根を張る「乃一」の挑戦。 ニーズに応えて総合リフォーム企業へ。
社会が求める変化を見据え、住環境をより良くしていく
Q.御社の事業内容をお聞かせください。
一戸建て住宅からマンションの大規模修繕にいたる様々な建築物のトータルリフォームを得意とし、最近は外装のみならず水回りを含む内装のリフォームなどあらゆる物件にお応えしています。また鉄塔の塗替え工事や、橋脚の塗替えなどの公共工事も請け負っています。
Q.名古屋で創業したきっかけなど、乃一様の歴史についてお聞かせください。
創業は大正13年、「乃一ペイント商会」として建築塗装工事請負業をスタートしました。創業者の乃一惣次は徳島県の出身で、尋常小学校卒業後に地元のペンキ店に入店、手に職をつけるため塗装工事に従事し、のちに入隊。除隊後しばらくして兄とともに長野県の木曽に移り住み林業に従事します。そこで出会った三河出身の女性と結婚して名古屋に移り住みました。新しい街でゼロからひとりでできる事業を、と塗装の技術を活かして看板製作所に入店、その後独立し、のちに社名を「乃一塗装工業」として成長してきました。4代目となる私が2014年の創業90周年を機に社長に就任した際、社名から「塗装」を外して「乃一」に改めました。総合リフォーム企業として広がりをもたせる、という想いを込めたのです。
事業の変革を経ても、地元への愛と変わらぬ人付き合い
Q.御社の成長と名古屋独自の地域性、重なる部分はありますか?
名古屋の特性として「閉鎖的」とか「よそ者に冷たい」と言われることがありますが、それは裏を返せば地元を大切にする「地元愛」の表れだと私は思っています。弊社は、お客様しかり協力会社様もずっと変わらず地元の方を中心にお付き合いをしてきました。仲間意識が強いんですよね。名古屋ではまず人を売り込んで信頼を得てから仕事になる、というイメージです。新規訪問の際に「挨拶だけで諦めてしまった」という話を聞くと、もう少し時間をかけて仲良くなればうまくいくこともあるのに、と思うことがあります。関東にも事業所があるので、私も地域による商習慣の違いを感じています。乃一としてはこれまで大きな投資はあまりせず、新規事業に関しては既存事業の周辺にとどめ、振れ幅は少ないかもしれませんが徐々に成長する、ということを念頭にやってきましたので、名古屋人気質の「堅実」という部分についてもあてはまるかもしれません。
Q.創業から脈々と息づく「人を大切にする」精神についてお聞かせください。
「企業は人なり」の言葉通り、一人の社員が80%の力で働くのか100%の力を発揮して働くのかで業績は大きく違ってきます。企業として「人を大切にする」には、お客様はもちろんのこと社員をはじめ協力会社の方々にも喜んでいただける「器」である必要があります。社員のモチベーションを上げるために、ということは常に考えています。そのため評価基準を明確にして相互に納得のいく正当な評価をすることで自分の立ち位置を知ってもらい、どうやったら次のステージにあがれるかを提示するなど自己成長を支援するようにしています。またインセンティブ制度を導入し、目標とする利益を越えたら還元するというしくみに変えたところ社員の年収ベースもアップしましたし、会社の売り上げもあがるという好循環が生まれています。
Q.建築業界は人の入れ替わりが多いイメージがありますが、乃一さんが社員のために大事にしていることはありますか?
同業他社に比べて‘なるべく規制はゆるく&給料は高く’。業績が良ければその業績に応じて待遇を良くするべきだと思いますし、有給休暇の取得促進や、オフィスを改装してフリーアドレスにするなど働きやすい環境整備をしています。最近は、社員の紹介でいい人材が集まってきておりまして、これも社員に会社を信頼してもらえている証かな、とありがたく思っています。また「会社は社会の公器」であるという理念のもと、トップダウンではなく常に社員と対話をしながらより良い選択をしていくことを心がけています。
モノづくり産業を支え、地域密着で名古屋市の発展に寄与していく
Q.名古屋の魅力はどんなところだと思いますか?
一番はやはり立地の良さです。日本の中心地なのでどこにいくにもスピーディーに移動ができます。公共交通機関も発達していますが、我々の商売は基本的には天候に左右されないようクルマ移動のため、名古屋近郊は関東圏に比べると駐車がしやすいのも利点です。弊社の主力工事はマンションの大規模修繕となるのですが、地元密着で商売をしていることをアピールすると仲間意識が芽生えるためか、とっかかりの良さを感じています。マンション修繕は契約金額が大きく、工事後のメンテナンスを考えると末永いお付き合いとなりますので、名古屋に拠点があること、担当者が変わらないことが信頼につながっているように感じます。
私自身、名古屋生まれの名古屋育ち。名古屋で育ててもらったので恩返ししたい、という気持ちがあります。だから今後全国に事業展開をするという展望はあっても、私が社長のうちは本社はこれからもずっと名古屋のままです。
Q.自社ビルの拡張に「名古屋市フラグシップ企業強化促進補助金」を活用した経緯については?
これまで堅実に企業経営をしてきたという話をしましたが、ソフト面の充実のため工務店のM&Aなど、社業に必要なタイミングに応じて必要な投資は都度行ってきました。今回の隣地取得と自社ビル拡張については、社員が増えていくなかでオフィスが手狭になったことと、駐車場も拡張したいと考えていた際にたまたま隣地が空き、一筆という条件だったのですが一部借り手の目処がついたおかげで思い切ることができました。制度を知ったきっかけは取引銀行からの紹介で、調べてみたら今回のプロジェクトにおいて建物の改築について要件が合致することがわかり申請した、という次第です。補助金をいただくからには、これからも地域密着で名古屋市の発展に寄与していかなくてはと考えています。市内の風景を見渡すと老朽化した建物は多く、少し手を加えるだけで街並み自体も変わるんじゃないかと思っていますので、街が変われば人も変わり、良い循環が生まれる、その一助になればと考えています。投資には勇気がいりますが、調べてみるとさまざまな補助金がありますので活用されることをお勧めします。
外観も機能性も向上させて、長く愛される建物を増やしていく。
Q. 名古屋からさらに挑戦したいことは?
名古屋を拠点として、全国に販売網を広げていきたいです。IT技術の進歩や、数年先にはリニアも完成し東京や大阪などは通勤圏内となるでしょうから、出店の仕方も少しずつ変わっていくように感じています。また昨今は新築よりも改修のニーズが高まってきていますので、いかに既存の建物を価値のある建物として蘇らせることができるか、見た目も機能もお客様の「想像を超える創造」ができるよう挑戦を続けていきます。そして名古屋の強みであるモノづくり文化を支える産業の担い手として、引き続き地域に貢献をしていきます。
3年後には創業100周年を迎えますので、社史の編纂と並行して今回の社屋拡張も記念事業の一環としていきたいですね。