社会に役立つビジネスを、名古屋から世界へ。 ワクワクする気持ちを大切に、人生を前に進めていく。
株式会社ウィーケン
佐々木 亜由子氏
学校法人グロービス経営大学院
三井 敬二氏
- スタートアップ・ベンチャー
- 名古屋創業
- TOP
- INTERVIEWS
- 社会に役立つビジネスを、名古屋から世界へ。 ワクワクする気持ちを大切に、人生を前に進めていく。
「チャレンジして作り上げる」、ワクワク感を信念の軸に。
大阪出身、航空宇宙産業での営業経験を経て、‘ワクワクすることを仕事に’と名古屋で(株)ウィーケンを創業。「子ども向けの企画が世の中で一番難しい。子どもは素直で、大人みたいに愛想笑いもしないし、つまらなければすぐにどこかへ行ってしまうから。でも子どもの興味を惹きつけられる企画ができれば、応用していくことはできる」と話す佐々木亜由子さんの感性豊かな視点に迫ります。
Q. 御社の事業内容についてお聞かせください。
子どもの未来の可能性を広げる体験型の教育サービス『ウィーケン!』の企画・運営をしています。例えば「歯医者さんで歯科医から学ぶ」といった1DAY体験から、海外と生中継しながら実施する「オンライングローバルスクール」まで、国内外の親子が参加しています。
そのほか、現在は法人向けの社内イベント、研修、名古屋市の子ども会活性化事業等へも事業を拡大しています。当社は「表現する会社」と称し、強みである企画力を生かし、体験種類だけでもリアル・オンライン合わせて300種類以上あります。顧客に寄り添う企画運営を心がけ、体験満足度は10点満点中の9.8点を誇ります。「自分の道を自分で切り拓く人を応援したい」という想いは、対象が子ども・大人、個人・法人にかかわらず創業から変わりません。
Q. 新卒で就職された企業では航空機やロケットの営業担当。そのキャリアからの転身についてお話しいただけますか。
これは(株)ウィーケン創業の想いにもつながっているのですが、私は子どもの頃から戦争、世界平和、日本が世界でいかに負けない国でいられるか、ということに興味がありました。神戸大学の国際文化学部(現 国際人間科学部)で国際政治を学び、新卒で三菱重工業株式会社へ就職。航空宇宙分野への配属となり、名古屋へやって来ました。航空機やH-IIAロケットの輸入調達・営業等を担当し、JAXAと組んで新型ロケットの開発プロジェクトに携わったり、種子島でのロケット打ち上げに立ち会ったりと、多忙ながら充実した日々を送っていました。
ところが出産・育児とライフステージが変化して「自分の人生でやりたいこと」を改めて考えたときに、「ビジネススキルや自分で新しいことにチャレンジするマインドも環境も今は足りていない」と気づきました。そこで私は育休から職場復帰して1年後に、グロービス経営大学院に通い始めました。グロービスでの刺激的な‘学び’や‘出会い’を経て、規模は小さくても「自分がやりたいことを自分の手でチャレンジして作り上げる」ことのワクワクを体感し、今の事業での起業に至りました。
学んでわかったこと。心からやりたいことなら、踏ん張りがきく。
Q. キャリアの転機となった「経営大学院での学び」に、グロービスを選んだ理由は?
「働きながら通える環境」を前提に、「本気で学べる場所(講義内容、講師、環境)であり、切磋琢磨できる刺激的な仲間がいること」を重視しました。初年度に単科(MBAの科目を1科目から受講できる)で受講してみて、グロービスはそれが叶えられる場所だと確信し、本科(2年間のMBAプログラム)で入学を決意。単科・本科合わせると通算3年間通いました。
その3年間は、仕事、子育て、大学院と3足のわらじで時間のやりくりが大変でしたが、刺激的で充実した日々でした。卒業後もグロービスのつながりは続いていて、同期や一緒に学んだ前後入学期の先輩・後輩はもちろん、初対面でも「グロービス出身です」のひと言で、卒業生が一気につながり合えるのは、大人たちが真剣に学び合った日々の証だと思います。
ビジネスにおいては理論と実践、どちらも大切だと思うのですが、グロービスで学んだ理論は今の事業でPDCAサイクルを回すうえで非常に役立っています。「テクノロジーを応用して、ビジネスを加速していく」という発想であったり、考え方のベースとなる「どの事業にも通じる世の中の見方」など、経営者としての総合力を身につけることができました。
Q. 三井さんにお尋ねします。佐々木さんのように高い志を持つ起業家を多く輩出されている、グロービス経営大学院とはどのような場所なのでしょうか。
弊校は 2006 年の開学以来、「能力開発」「人的ネットワークの構築」「志の醸成」を教育理念に掲げ、ビジネスの創造や社会の変革に挑戦する方々の支援をしています。
特に佐々木さんに関連する事業の「創造」という点では、ベンチャーキャピタル事業から得た知見を反映したカリキュラムを基に、ビジネスの最前線で活躍する経営者・リーダーが講師として実務に直結する学びをお届けしています。また、ビジネスを創造していく上では、心が折れそうな時に支えてくれる・行き詰まった時にアドバイスをくれる仲間が欠かせません。そういった起業家仲間とのつながりを築き、相互支援の役割を果たす 3,500 名規模の起業家コミュニティもあります。これらのような学びやコミュニティが佐々木さんの起業やその後のご活躍の一助になっており、大変うれしく思っています。
Q. 三井さんから見て、名古屋のビジネス環境の特徴だと思われる点は?
事業の「創造」という観点だと、名古屋エリアには自動車メーカーをはじめとした大企業から新進気鋭のスタートアップまで、特徴あるプレイヤーが数多く存在します。そして、そのプレイヤー間でのオープンイノベーションを促す機会・場づくりを、産官学が密に連携しながら推し進めています。この点は、名古屋エリアのビジネス環境の特徴の一つです。また、ものづくりの集積地として歴史ある名古屋エリアだからこそ、高いエンジニアリングレベルを活かし、ものづくりを軸としたユニークな事業が生み出されている点も特徴的ではないでしょうか。
一つ目の特徴としてお話した、様々な企業・ビジネスパーソンのコラボレーションによる事業の「創造」という点においては、我々グロービスも今後より一層お役に立っていきたいと考えています。名古屋校では、企業規模を問わず経営層から現場層の方まで、また営業・企画系の職種の方に加えてエンジニアやデザイナー、医師やアスリートなど多様な職種の方が集っています。ビジネスの原理原則を体系的に学ぶ場としての役割だけでなく、このような方たちがビジネスでコラボレーションするきっかけの場としての役割も果たしたいと考えています。そして今後も、佐々木さんの事業のように、日本の社会課題を解決する事業の創出を支援していきたいです。
‘働いて欲しい人たち’のニーズに合わせて働き方を工夫。
Q. 佐々木さんが「名古屋で良かった」と思うのはどんなところですか?
働く母親視点でいうと、会社、保育園、病院、スーパー、自宅、というように、生活圏を車で一気に移動できること。育児中は時間に追われ、また常に荷物も多いため、「車で移動できる」メリットは大きいです。名古屋は都会で利便性が高いですが、市中はそれほど渋滞しません。私がグロービスに通っていた時期も、自宅、会社、保育園を結んだ三角形の生活圏内を車で走り回っていました。
Q. 会社の本拠地を名古屋に置く、その魅力は?
当社のメンバーはほとんどがお母さん、お父さんです。働く時間の自由度が高いスーパーフレックス制度を導入し、直接雇用、業務委託、副業・複業スタイル、週末だけ、と働き方もさまざま。愛知県には、パートナーの転勤や育児のために自身のキャリアをいったん中断されている優秀な方がたくさんいる、と私は以前から感じていて、働き方に自由な選択肢があれば、そういった方たちにも参画していただけるのでは、と考えました。 ‘働いて欲しい人たち’のニーズに合わせた働き方などを工夫できたら、優秀な方が集ってくれるのではないか、という発想です。おかげさまで、働く仲間に恵まれました。
名古屋は東京、大阪といった大都市圏へのアクセスもいいですし、何より子育て環境がとてもいいです。車で1時間ほど走れば海にも山にも行けて、公園も市内にたくさんありますし、30代・40代の忙しい世代にとって、公私のバランスが取りやすい街だと思います。私が名古屋に来たばかりの20代の頃は「ごはんが美味しい」くらいだった印象が、子どもが生まれてガラリと変わりました。育児を通して地域と関わるようになると、生活圏が「点」から「面」になっていきます。そこで地域の良さに気づく。私もPTA役員をしたり、現在は子ども会の会長を引き受けたりと、かなり地元密着で活動をしています。また名古屋市には「子ども医療費が18歳まで無料」という制度があり、本当に助けられました。就学前の娘は病気がちで、病院にお世話になりっぱなしだったので。おかげさまで小学校5年生となった今はとても元気に過ごしています。
名古屋発の企業として、世界へ価値を届けていく。
Q. (株)ウィーケンとして、これまでに活用された行政支援等はありますか?
昨年、『Hatch Technology NAGOYA』という行政との社会実証プロジェクトに参画し、名古屋市農業センター 『delaふぁーむ』を舞台に、体験型のイベント等を共創させていただきました。これまでリアルで行っていた子どもたちの体験イベントをオンライン化したい、というコロナ禍をきっかけとした課題への取り組みです。職員の皆さんにヒアリングを重ね、『delaふぁーむ』のいいところをどう魅せたらターゲットに響くかを考え、オンライン企画に昇華させていきました。330度あるという牛の視野を体感してみる企画もその一つです。また、『delaふぁーむ』の皆さんから「名古屋の地元の特産物を広めたい」という話をいただいた時は「名古屋コーチンの焼き鳥を送って、それをみんなで調理して食べる」というオンラインイベントを企画したところ、人気コンテンツとなり名古屋はもちろん全国から親子が参加して下さり、喜んでいただきました。
私たちには「地域の事業者や自治体のいいところを組み合わせて企画するプロフェッショナル集団」としての自負がありますが、露出の機会がなければ知名度は上がっていきません。そんな時に「名古屋市の施設として認知されている場所」でイベントをやらせていただける機会は本当にありがたくて。多くの人に『ウィーケン!』のことを知っていただけたり、実績にもなります。事前のプレスリリースや、最終プレゼン発表の場には多くのメディアが来てくれるなど、そういった機会も本当にありがたいことでした。
Q. 名古屋の地域性について感じることはありますか?
ものづくりの一大拠点である名古屋圏は、製造業の集積地です。現在、法人向けの企画についての引き合いが増えているのですが、「人」を育てることに関心が高いメーカーと、「人」の未来を応援する当社のサービスは相性がいいようです。また私が製造業出身ということもあり、メーカーの事業内容や雰囲気、工場の様子、大企業の内部の意思決定の仕組み等を考慮して商談を進められる点も評価をいただいております。
名古屋でビジネスをしていると「閉鎖性」について言及される方は一定数いらっしゃいますが、私はあまりそうは感じていません。何事も、光の当て方次第で長所にもなれば短所にもなる。その土地の文化や傾向はあるのかもしれませんが、目の前の「人」と仕事をするには、「どうやってやるか」を考えればいいだけかな、と思います。名古屋はリピーターさんが多く、「紹介文化」というのでしょうか、気に入っていただけると横に広がっていく感覚はあります。
Q. 今後、名古屋から挑戦したいことは?
コロナ禍というピンチに考え抜いた結果、これまで構想してきた「体験のオンライン提供」を始め、全国・海外とのつながりを増やすことができました。目指す先は、変わらず‘世界’。(株)ウィーケンとしてさらに力をつけて、国内外へ価値を伝えていきたいですし、かつ海外の価値も日本にどんどん伝えていきたいです。社内のメンバーとは「私たちが60歳、70歳になったときに、海外の機関から『シニア向けの体験企画を考えてよ』と声がかかるような存在になりたいよね」と未来のことまで想像してワクワクしています。