自動車産業が密集する名古屋に移転して業績は右肩上がり
タンカースジャパン合同会社
セールスマネージャー
杉浦 義和氏
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製造業ひしめく名古屋へ。
Q.御社の事業内容をお聞かせください
タンカースジャパン合同会社はドイツの産業機器メーカーの日本法人です。1970年代にタンカース一族が創業した伝統ある会社で、自動車生産工場で使われるクランプ、グリッパー、搬送システム、回転台などを製造・販売しています。すでに欧米では高く評価されており、かなりのシェアを誇っています。自動車メーカーや一次請けサプライヤーがお客様になります。
例えば、グリッパーで言えば、現場のロボットが持てる重さは決まっているので、なるべく機器を軽くしたいんですよね。タンカース社のグリッパーはアルミ製なので、既存の鉄製グリッパーと比べて軽いことが特徴です。
日本国内では「知る人ぞ知る」といった感じで、知名度も販売量もこれからです。現時点では国内市場で確実に需要が見込めそうな品目を絞って営業展開していますが、少しずつ扱いを増やしていく予定です。
Q.日本へ進出を決めた経緯をお聞かせください
世界に名だたる自動車メーカーを擁する日本は、大変魅力的な巨大市場です。ただ日本に進出するきっかけがなかった。そんな折、福岡の商社の担当者が、当社の製品を輸入・販売してたんです。ドイツ側で「これは日本でも売れそうだ」ということになり、2016年、日本に参入。先の担当者をヘッドハンティングする形で福岡に日本法人を設立しました。
Q.その後、名古屋に移転したのはどういう理由でしょうか
ある大手自動車会社の工場ラインにタンカース社の製品をのせたいというのが、ドイツ本社の考えでした。それなら自動車産業の中核地域に乗り込むべきだと判断が下り、日本進出から2年後に名古屋に移転することになりました。
中国のコンサルティング会社で当社の商品を扱っていた担当者をヘッドハンティングして、日本のGMに据え、名古屋オフィスを設立しました。ただし、当初はオフィスもなく、Wi-Fiのある喫茶店を回って、朝から晩まで仕事していたようです。取引企業には英語を喋れる方が多いので、外国人のGMが行くことで、フレンドリーな関係が築けたことも多かったようです。ドイツでは名の通ったブランドなので、「タンカースを知ってます。名古屋に来るんですね」と言ってくれる方もいたみたいです。
「良いものは積極的に取り入れる」のが名古屋イズム。
Q.名古屋に移転して、良かったことを教えてください
中部地区の自動車産業は規模が違います。愛知県のトヨタ自動車、三菱自動車、三重県の本田技研工業など自動車メーカーはもちろん、サプライヤーも多いし、自動車生産設備を作っている会社もたくさんあります。膨大な数のメーカーがこの地域でしのぎを削っており、自動車生産設備への受注を目指す当社にとって、メリットは計り知れません。まだ当社が知らない会社もたくさんあるはずで、可能性は広がります。
また、最近はリモートでの打ち合わせも増えていますが、お客様と顔を突き合わせて話すのが営業の基本なので、地理的に日本の中心で、新幹線や飛行機、高速道路などのインフラが整っているため、関東、関西、東北、九州などへアクセスしやすくなるのも魅力でした。
関東のお客様も多いんですよね。名古屋からだと距離も近いし、インフラも整っています。新幹線や飛行機も使いますが、サンプル機材を持っていく場合は車で行きます。自動車会社はたいてい都心から離れたところにあるので、車の方が便利なことが多いんです。高速道路が充実しているのはありがたいですね。
中部地区の数限りないお客様と、必要なタイミングでコンタクトできるのもメリットです。以前からお付き合いのあるお客様からは「フットワークが軽くなったね」と言われることがよくあります。名刺に「名古屋」と書いてあると、何かあったとき対応してもらえそうだという安心感もあると思います。
Q.営業活動のなかで名古屋人の気質をどう感じていますか。
「名古屋は排他的」と思われがちですが、まったくそんなことはありません。むしろ「カイゼン」の文化が根付いているため、いいものを積極的に取り入れる風土があるように感じます。クオリティや価格に対する厳しさもありますが、いったん信頼を得ることができれば長くお付き合いができると思います。
企業の製品採用の決定権が名古屋や名古屋近辺にある事も多いので、そこに入り込めれば横展開が早いんです。キーパーソンや規範となる工場を外すと展開が難しいので、戦略が重要です。今やっと「あの工場にタンカース製品あったよね。うちにも来てくれる?」というお問い合わせが増えてきているところです。
行政のサポートに支えられ、立ち上げがスムーズに。
Q.移転にあたって、名古屋市のサポートはいかがでしたか
グレーター・ナゴヤ・イニシアティブ協議会の事務局が、手取り足取り、立ち上げのサポートをしてくれました。名古屋市の外資系企業等進出促進補助金の情報をいただいたり、不動産会社や司法書士を紹介してくれたり、細かいところまでお膳立てしてくれました。事務所の立ち上げはすごくラクをさせてもらったと感じています。事務所開設当初は売り上げもなく、補助金がすごく助けになりました。ドイツからの送金に頼りっきりでしたので。
※グレーター・ナゴヤ・イニシアティブ協議会(GNIC)/グレーター・ナゴヤへの進出や事業拡大を希望している海外企業に対し、円滑にこの地域でビジネス展開ができるようワンストップでサポートしている組織。愛知県・岐阜県・三重県・名古屋市の外資系企業の誘致の際に、立ち上げを支援している。
Q.今後はどういった目標をお持ちでしょうか
売り上げが増えてきたのはここ最近のことです。「名古屋に来て成功した」と言い切っていいと思います。今は従業員が2人しかいないので、人を増やして、拡大させていきたいですね。名古屋は人が多いので、優秀な人材も採用しやすいと確信しています。