計測機器事業の本拠地を名古屋に構え、テクノロジーとデータを駆使してものづくりの根幹を支えていく

ヘキサゴン・メトロジー株式会社
伊佐治 尚氏

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グローバル化した製造業界に増す三次元測定機の存在感

Q.まずは伊佐治様とヘキサゴン・メトロジー株式会社についてお聞かせください。

私は現在ヘキサゴン・メトロジー株式会社のGeneral Managerとして三次元測定機を主とした計測機器事業の統括を任されています。愛知県出身で、現在は家族と共に名古屋市近郊に暮らしております。ものづくりに関わる計測機器業界で働きキャリアを重ねてきた中で、ヘキサゴン・メトロジー株式会社との縁に恵まれ、社歴としてはちょうど10年を迎えました。

当社は、スウェーデンのHexagon ABを親会社とするHexagonグループのHexagon Manufacturing Intelligence部門の計測機器を専門に扱う日本法人です。販売からカスタマイズ、アフターサービスまでワンストップで提供し、様々なものづくりの課題に対応しております。

Q.三次元測定機とは、どのような機能や役割を持つものなのでしょうか?

三次元測定機は、ものづくりに欠かせない存在です。例えば世界中に数多く流通する商品の1つの部品の製造工程で考えてみると、工程を経てできてくる製品には、設計された寸法との誤差がどうしても生じてしまいます。膨大な数の製品を1つ1つ人間の手で測り、許容範囲を超える誤差のあるものをピックアップしていくのは、相当大変な作業であり技術も必要です。三次元測定機は、接触式であればプローブ(探針)、非接触式であればレーザーを使って三次元座標を計測し、テクノロジーを活用して対象物を精密かつ正確に測定することができます。

測定機器や検査機器は導入時に比較的大きなコストがかかりますが、たった1つの部品であっても流通後にもし検査不備や不具合があれば、その影響は各所に及び、甚大なリスクになり得ます。三次元測定器をはじめとする測定・検査機器は、そういった実際に起きてからでは遅い重大リスクにつながる誤差を検知し、ものづくりの根幹となる品質への信頼や安全性をテクノロジーとデータによって補完してくれる頼もしい存在です。

ワンストップ対応を可能にする大規模拠点の開設を機に、本社機能も名古屋へ

Q.名古屋市への本社移転について、お聞かせください。

当社は1975年に創業しました。最初はDEAジャパンというイタリアの測定機器メーカーの日本法人として始まり、現地法人による企業買収等で他国のメーカーと協同し技術力や知見を補完的に高めながら、ヘキサゴン・メトロジー株式会社として神奈川県相模原市に本社を置いて営業してまいりました。

愛知県へは2014年に名古屋市名東区内に事業所を開設、その後2017年に長久手市内に物流及び測定機メンテナンス施設を開設して事業を推進してきました。パンデミックによる業績への影響も一時的にはありましたが、順調に回復しています。当初から自動車関連企業向けの売上比率が高かったので、今後の事業拡大を見据えて、本社機能のほか、販売からカスタマイズとアフターサービス、さらに物流まで全てを集約した大規模拠点を名古屋市内に開設し、本社を移転することとしました。

Q.本社移転にあたり、名古屋市本社機能等立地促進補助金を活用されたそうですが、手続きを進める中で役立ったサポートはありますか。

顧客であるメーカー企業様がものづくり補助金を活用されるケースを見聞きしていたこともあって、私たちの一大プロジェクトにも何か自治体から支援を受けられないかとインターネットで調べました。結果、名古屋市内に本社機能を移転する場合には、本社機能等立地促進補助金という制度があると分かり、担当部署である名古屋市経済局イノベーション推進部産業立地交流室へ電話をかけるところからスタートしました。

初めて連絡した時から担当者の方が非常に親身に相談に乗ってくださり、大変ありがたかったです。補助金を申請するにあたっては、様々な資料の作成が必要となります。どのような観点をもってどんな情報を集めてまとめれば良いかといったポイントについて、丁寧にアドバイスをいただけたことはとても助かりました。

快適かつスマートな職場環境の実現と、ものづくり大変革期の駆け込み寺的存在を目指して。

Q.新社屋が完成し稼働が始まった今、思い描かれているビジョンをお聞かせください。

新社屋の1階はショールームからメンテナンス施設、スムーズな物流が可能な倉庫へと連なっています。2階のオフィスは照明やレイアウトにもこだわってつくられており、IoTも導入して快適で生産性の上がる職場環境の実現に注力しました。

顧客の多い自動車産業界では「100年に1度の変革期」と言われ、自動化を超えて自立化に向かう流れの中、AI(人工知能)技術も加わることで今後の製造工程は省人化や高度化がさらに加速していくことが予想されます。当社としてもその一助になれるよう、技術開発に力を入れているところです。

当社の強みの1つが、三次元測定機を主とする計測・検査機器のハードウェアに加えて、そのデータを有効活用できるソフトウェアの開発にも力を入れていること。日々の製造工程を通して着実にデータを蓄積し、それらを適切に解析・評価することによって生産効率や持続可能性を高め最適化していく。このサイクルを無駄なく進めることで、顧客の課題解決に貢献できたらと考えています。

Q.自動車産業に限らず、どんなものづくりの現場にも活かせるものなのでしょうか。

もちろんです。例えば航空産業や大型の医療機器など、高い安全性が求められる製品には特に活用いただきたいと思います。また、橋梁などの巨大な建造物では、1つ1つの部品のサイズも大きく、製造段階で実際に組み合わせて確認や調整をすることは難しくなります。しかし、いざ組み立ててもし不具合があれば、工期の遅れ等の深刻な影響を及ぼします。こういった場合にも、バーチャル・アセンブリといって計測機から得られたデータと設計上のCADデータをコンピューター上で照合し、事前に製品の誤差を見つけ解消することが可能です。

ものづくりの工程で困ることがあれば、ヘキサゴン・メトロジーの名古屋本社へ行って相談してみようと頼ってもらえる駆け込み寺的な存在をイメージしながら、新社屋をつくってきました。交通も自動車でのアクセスはもちろん、公共交通機関も利用できるこの場所に貴重なご縁が繋がったので、全国から様々なお客様に来ていただけたらうれしいです。

働きやすさと暮らしやすさを同時に叶えていける場所に。

Q.今後の事業拡大へ向けて、名古屋市での採用状況についてお聞かせください。

新たに仲間を見つけるという意味では、現状はどこも人材確保が難しい印象です。当社は高額かつ複雑な技術を含む製品を扱うため、業界や技術に関するある程度の知識や経験値が必要であることを考えると、今ここで共に働いているメンバーがそれぞれのパフォーマンスを最大化できる働きやすい環境づくりが必須であると感じています。ハード面としての職場環境の改善は引き続き重ねていきたいですし、ソフト面では一人ひとりが自分の意見や思いを言い合える関係性づくりや、それぞれの仕事や役割にやりがいと責任を持てる評価制度の充実も大切です。両側面での働きやすさの向上を目指しつつ、若手の成長促進も急務だと感じています。その延長線上に、新しい仲間との出会いや良いご縁があればうれしいですね。

また、名古屋市は関東・関西はもちろん、他地域へのアクセスも良いですし、郊外に出れば自然も豊かで、家族で楽しめるレジャー施設もあります。利便性に優れながら公共料金や物価が首都圏と比較すると割安なのも、日常の中でつい当たり前のように感じてしまいますが、改めて魅力的なところです。今一緒に働いているメンバーにも、これからご縁のある方にも、働きやすさと暮らしやすさを両立し得る地として名古屋市の特長を感じてもらえると良いなと思います。

Q.最後に、今後名古屋進出を考えている企業へのアドバイスやエールはありますか。

ひとことで名古屋進出といっても、事業によって必要な情報や最適な条件はそれぞれに異なると思うので、具体的なアドバイスをと考えると難しいのですが、自分たちにとって必要な条件を明確にしておくことや、進出にあたりご協力くださる地域の方々としっかりコミュニケーションを取ることはとても大切だと思います。

また、今後例えば異業種交流のような形でそういったお話や情報交換ができる場があれば、ぜひ参加したいですね。名古屋進出をキーワードに新たなご縁がつながる機会の創出も、今後の市の動きとして期待しています。