多くの条件を検討し名古屋への移転を決定。新卒採用において出始めている移転の効果。

株式会社ソシオネクスト
総務人事統括部 統括部長代理 兼 総務人事部長
猪熊 亮介氏

グローバル開発本部バックエンド開発部 シニアプリンシパルエンジニア 兼
名古屋事業所長
佐久間 正二氏

総務人事統括部 総務人事部 西地区総務人事課 課長
松井 裕介氏

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Q.御社の沿革と事業内容をお聞かせください。

当社は、富士通グループとパナソニックのシステムLSI事業を統合した新会社として2015年3月に設立され、SoC(システムや機器の動作に必要な複数の機能を統合した半導体デバイス)の設計、開発および販売を行っています。当社は、お客様と協力して、お客様のコンセプト段階から参画し、グローバルな半導体産業のエコシステムとの連携により差異化を実現する「Solution SoC」という新しい独自のビジネスモデルを掲げています。
また当社は、製品製造のための自社工場を持たない、ファブレス(fabless)という業態を採用しています。

Q.2024年7月に名古屋市中区に事業所を移転されています。移転の経緯をお聞かせください。

もともとは同じ愛知県内の春日井市に高蔵寺事業所がありました。富士通から引き継いだ高蔵寺事業所は竣工から約40年が経過しており、建屋の老朽化が進んでいました。そのため、従業員の生産性向上や満足度向上のためのオフィス環境改善や最新のセキュリティ導入などの課題解決が困難な状況にありました。こうした課題を解決するために移転を検討することになりました。

Q.移転先を検討するに当たって、どのような条件を出されたのでしょうか。

移転候補地には、次のような条件を考えました。

  • 高蔵寺事業所の従業員の通勤や生活基盤への影響が少ないこと
  • 半導体の設計開発に必要な大型設備が設置できること
  • 主たる事業所である新横浜、京都と連携を図るため、東西とのアクセスが良いこと
  • 新卒人材の確保を強化するため、学生にとって魅力的な立地であること

Q.名古屋市内で具体的な移転先を選定される上で困ったことは。

名古屋に本社を構える企業は自社で建物を所有するケースが多いのではないでしょうか。自社建物ならば必要となる建物スペックをカスタマイズできます。当社のような研究開発型企業はその受け皿としてサイエンスパークのような研究開発施設が最適ですが、名古屋の都心部にはそうした施設が少ないと感じました。当社の拠点である新横浜、京都はいずれもそうしたサイエンスパークのようなテナントビルに入居しています。

Q.なぜサイエンスパークのような研究開発施設が求められるのでしょうか。

研究開発型企業は重量の重い検査機器を持つことがあります。当社の移転に際しても、高蔵寺事業所で使用していた「テスター」と呼ばれる重量1トンを超える装置を複数設置できるかが、テナントビルを選定する必須条件となりました。幸い、名古屋のビジネスの中心地である伏見に条件に合ったビルがみつけることができました。設置とともに搬入も考える必要があります。移転先のビルの通路幅は決して広くなかったため、搬入の際は設備を小さく分解して設置場所に運び込みました。テスターよりも大きな設備に関しては、使用用途を鑑みて名古屋事業所以外の場所に配置することにしました。これから進出を考える研究開発型企業は、社内での機能分散を含めて、重設備の適正立地を考えることが鍵になると思います。

Q.移転前の事業所の課題として、オフィスセキュリティなど機密性の強化を掲げておられましたが、これに対してはどのような方策を立てられたのでしょうか。

当社のビジネスの特徴としてお客様の機微な情報をお預かりするケースが多くあります。
そのため、オフィスセキュリティ強化を最優先に考え、フロアごとのセキュリティゲートの構築や、入退室の動線への監視カメラの設置などを施しています。

Q.ビジネスをするうえで、名古屋の地域性や優位性、魅力をお聞かせください。

設立理由で申し上げたように、当社は新横浜、京都と東海道新幹線沿線に事業所があるため、連携を図るうえで東西とのアクセスが良いことが挙げられます。政令指定都市としての名古屋は生活環境が整っており当社の他拠点比べてもビジネス地区、商業地区、住宅地などが複合的に密集しており、かつ近隣に公園が多く緑が豊かであるため、ビジネス拠点としても生活拠点としても適しているという印象です。

Q.人材の獲得状況はいかがですか。

中核となる30~40代の従業員を、中途採用で増やしたいところですが、苦戦している状況にあるため、新卒採用で積極的に入れていきたいと考えています。採用活動においても伏見に移転することをアピールしたところ、複数名が伏見なら配属を希望するという話を聞きました。移転による効果はすでに出始めていると考えています。

Q.これから、名古屋で挑戦したいことをお聞かせください。

名古屋の地域性を生かして同業他社を含めた幅広い企業との交流を深め、商談や企業活動をさらに活発化させたいと考えています。その上で新卒採用をより強化していきたい。名古屋という新しい地でスタートを切ったことを機に、従業員一丸となって事業所を盛り上げていきたいと思います。現状では、新横浜、京都につぐ3番目の拠点となっていますが、社内における存在感をさらに高めていきたいと考えています。

Q.研究開発企業として行政に期待することをお聞かせください。

学生や大学は短期的な目線で就職先を考えてしまいがちですが、行政には長期的な視点で10年先、20年先を見据えた人材育成の方向性を示していただき、大学の研究や教育を先導していただきたいと思います。