製造業の聖地から挑戦の聖地へ〜TechGALAが切り拓く名古屋のビジネスチャンス〜

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当地域のスタートアップ・エコシステムの形成を目指す「Central Japan Startup Ecosystem Consortium」(一般社団法人中部経済連合会、名古屋大学、愛知県、名古屋市、浜松市等で構成)が主催するテクノロジーの祭典「TechGALA Japan 2026」が、2026年1月27日から29日の3日間、名古屋の街を舞台に開催されました。
本イベントは、テクノロジーを生かした持続可能な未来を築くため、国内外のスタートアップ・事業会社・投資家等が一堂に会し、新たな時代の連携を創出するグローバルな出会いの場を提供することを目的として2024年度から開催されています。
2回目となる今回は、世界的に著名なスピーカーによる3つの基調講演をはじめとして、10の国・地域の15社が登壇するピッチコンテスト、スタートアップと企業が短時間で商談を行うスピードデイティング、141のセッション、252の展示、そして126ものサイドイベントと盛りだくさんの企画が展開されました。そして、5,500名を超える参加者が集い、前年を上回る熱気に包まれました。
本記事では、進化を続けるTechGALA Japan 2026の模様を、ダイジェストでレポートします。

TechGALA 2026 オープニングアクト

TechGALA Japan 2026のオープニングを華やかに飾ったのは、音楽プロジェクト「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」。
彼らが奏でるのは、役割を終えたブラウン管テレビや扇風機、バーコードリーダーといった使い古された家電を、独自の感性で蘇生させた「電磁楽器」による現代の「電磁祭囃子」。大阪・関西万博でも喝采を浴びたこの演奏には、名古屋の高校生たちも参加しました。
古いテクノロジーに新たな命を吹き込み、オーケストラとして昇華させていく。その創造的な音色は、まさに技術の可能性を信じる本イベントの幕開けにふさわしいものでしょう。

キーコンセプトは「地球の未来を拓くテクノロジーの祭典」

  • 供:TechGALA Japan 運営事務局

イベントプロデューサーの奥田浩美氏は、中部地区は、豊かな精神性と人が介在するものづくりが引き継がれてきた街であり、そのような街から、地球上のさまざまな課題を解決しつつ、より良い未来を作り、テクノロジーと共に幸せになることを語り合う場としていきたいと挨拶。
主催者の一人である広沢一郎名古屋市長も、昨年のTechGALAがきっかけとなってインドを訪問した経験を語り、グローバルな人材の集積や、新たな経済交流の契機となるよう期待を寄せました。
奥田氏はオープニング後の記者会見においても、名古屋の高いポテンシャルに言及しています。
(以下、奥田氏)
「まず、この地域はアカデミアやディープテックの力が非常に強いと感じています。私の知る範囲でも、ロボティクスや宇宙といった分野の起業家たちが、『実際に(プロトタイプなどを)作れる場所』を求めてこの地に進出してきている、あるいは地元の事業会社から投資を受けているケースが非常に多いです。」
「また、『投資』という面でも、この地域には独自の特徴があります。一般的に投資といえば『ベンチャーキャピタル(VC)』を思い浮かべる方が多いと思いますが、実はこの地域は、VCの資金以上に、事業会社が持つ『新規事業への投資』や『CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)』の規模が非常に大きいです。」
「『作れる場所』があり、それを支える『事業会社の潤沢な資金』がある。それこそが、新しい挑戦をしようとする方々にとって、名古屋・中部エリアが提供できる最大のチャンスではないでしょうか。」

実際に形にできる現場としての技術力と、それを力強く支える事業会社による厚い支援。名古屋は、次世代のイノベーションを求める企業にとって、いま最も確かな手応えを感じられるフィールドの一つとなっているでしょう。

Keynote|地域の未来の向けたメッセージと対峙

  • Monika Bielskyte氏

Monika Bielskyte氏
本イベントでは数多くのトークセッションが行われましたが、その中でも一際注目を集めたのは、世界を舞台に活躍する方々による基調講演。地域の未来に向けたメッセージは、参加者一人ひとりに深い問いを投げかけ、その瞬間からの行動変容を意識づけるものとなりました。
以下概略を記載します。
初日には、NIKE初のFuturist、Monika Bielskyte氏が登壇。
テーマは、未来を『描く』日。
想像力を実務に転換し、現実の行動変容につなげる“未来を描く技術”についてお話しされました。
そして2日目には、インド最大級のスタートアップメディア「YourStory」のFounder & CEOであるShradha Sharma氏がオンラインにて登壇。
テーマは、現在を『探る』日。
急速に変化する環境に対応しながら組織を成長させ、相互につながるグローバル市場で意味あるインパクトを生み出すための実践的な視座が提供されました。
結びとなる3日目には、ノーベル物理学賞を受賞された名古屋大学の天野浩氏が登壇。
テーマは、明日を『創る』日。
基礎科学のブレイクスルーから、ビジネス化、グローバル戦略まで、幅広くイノベーションの可能性について語られました。

Grand Pitch 2026|「製造業の中心」から世界を狙う

「Grand Pitch 2026」は、世界進出を目指す国内スタートアップと、日本市場を狙う海外スタートアップが激突するピッチコンテストのこと。日本の中心・名古屋を舞台に、国境を越えた新たなパートナーシップと市場開拓の機会を創出します。
今回は海外勢12社、日本からは3社が登壇。話題のフィジカルAiをはじめとして各社が製品・サービス・技術の優位性を競いました。
そんな次世代を担い得る15のスタートアップの中から、株式会社スリーラボの夏目航平氏にお話をうかがいました。

  • 株式会社スリーラボ 夏目航平氏

ーー:御社の事業内容について教えてください。
夏目氏: 私たちは名古屋工業大学発のベンチャーとして、レーザー加工技術の開発を行っています 。目指しているのは「製造業をサステナブルにする」こと。具体的には、工場で使われる消耗品である切削工具の「再研磨」を効率化し、より長く、賢く使える仕組みを作っています。
ーー:「Grand Pitch 2026」に出場を決めた理由は何でしょうか。
夏目氏: 私たちは創業時から世界展開を意識しています。まずは広く可能性を探りたいと考え、このイベントへの参加を決めました。私たちが技術を届けたいターゲットは製造業の方々であり、製造業の中心地といえば、真っ先に思い浮かぶのは名古屋です。この地から、地元のものづくりを盛り上げる存在が出てきたんだと応援してくださる方を増やしていきたいですね。
ーー:Grand Pitch 2026や展示ブースを通じて、どのような成果を期待されていますか?
夏目氏: もちろん優勝は狙っていますが、それ以上にお客さまとの繋がりが大切だと思っています。「自分たちの工場でも使えるんじゃないか」と興味を持っていただける方と出会いたいですね。イベントが始まって数時間ですが、すでに海外の方から現地の展示会にお誘いいただくなど、想像していなかった方向への広がりも感じています。TechGALAが来年も開催されるなら、ぜひまた参加したいです。

Speed Dating|スタートアップ不毛の地から、支援の厚い選ばれる街へ

「Speed Dating(スピードデイティング)」とは、スタートアップと事業会社・金融機関等が、短時間で「壁打ち」を行うマッチング企画のこと。形式にとらわれないオープンな対話を通じ、将来の提携や投資に向けた関係構築の第一歩を築きます。
40の事業会社・金融機関等がブースを設け、あらかじめ掲げた課題に応募した延べ109のスタートアップとの面談に臨みました。
その参加企業の中から、株式会社名古屋銀行の藤本良太氏にお話をうかがいました。

  • 株式会社名古屋銀行 藤本良太氏

ーー:今回、名古屋銀行がSpeed Datingへの参加を決められた理由を教えてください。
藤本氏: もともと名古屋銀行として、地域経済を盛り上げていきたいという強い想いがあります。今回のSpeed Datingへの参加は、もちろんスタートアップ企業の皆さんの支援という側面もありますが、連携の可能性を探りたいという狙いもあります。 私たちのお客さまは地域の中小企業の方々ですので、そうした企業様が抱える「新しいことをやりたい」といった課題に対し、スタートアップ企業の皆さんの力を借りて、ご紹介や支援ができるのではないか。そうした連携が役立てる可能性も含めて、今回参加させていただきました。
ーー:名古屋に進出する企業や起業家が増えていますが、現場ではどのように感じられていますか?
藤本氏: 以前は「スタートアップ不毛の地」などと言われることもありましたが、今はもう、変わりましたね。「STATION Ai」のような拠点もできましたし、銀行だけでなく、大手企業も横でつながりながら支援ができる体制が整ってきました。
ーー:地元の金融機関として、この変化をどう捉えていますか?
藤本氏: この地域には製造業を中心とした強い経済基盤があります。その中でポテンシャルを活性化させていくことは、地元の人間にとっても、皆が同じ目線で叶えたかったこと、変えたかったことなのかなと思っています。 名古屋にはビジネスチャンスが確実にあります。私たち名古屋銀行も、単なる金融支援に留まらず、共にこの街を盛り上げていくパートナーでありたいと考えています 。

多彩なセッション・展示、回遊型スタイルで街全体が盛り上がる

今回のイベントは、TechGALA Japan 2026のメイン会場である「中日ホール&カンファレンス」をはじめ、名古屋のイノベーションハブ「ナゴヤイノベーターズガレージ」が入るナディアパークなどの栄地区6拠点とステーションAiのある鶴舞地区で開催されました。街に点在する複数の会場を回遊するスタイルが採用されており、栄地区はいずれの拠点も徒歩圏内。街中には、TechGALAのパスや手提げ袋を持った参加者が多く見かけられました。
各拠点では、前述のプログラムのほか、事業会社やスタートアップ等による数多くのセッションや展示、多種多様なサイドイベント、ネットワーキングが開催され、名古屋の街全体が熱気に包まれた3日間となりました。

熱狂の先にある未来へ、進化し続けるTechGALAの可能性

名古屋の街を舞台に盛り上がりを見せたTechGALA Japan 2026。プロデューサーの奥田氏がオープニングにおいて、数字では表せない「熱量」が溢れ出てくる場にしたいと話していましたが、その「熱量」は7つの会場を巡る参加者の足取りや、ステージへと放たれる熱い視線、そして各所で生まれた新たな対話の端々に存在していました。
製造業の伝統と次世代のテクノロジー、そして事業会社が持つ強固な支援体制が混ざり合うこの場所は、いま日本で最も新しい可能性が生まれるフィールドになりつつあります。この勢いは、年々開催を重ねるごとに、さらに加速していくことでしょう。
名古屋にはチャンスがある、その言葉を会場で体感してみてください。来年は、あなたがこの熱狂の主役になる番です。