健康寿命延伸の「名古屋モデル」を夢見て。名古屋大学発ベンチャーの挑戦。

株式会社ヘルスケアシステムズ 代表取締役
瀧本陽介氏

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出る杭を伸ばそう。
企業が成長できるポテンシャルを持つ名古屋。

Q.名古屋で起業された経緯を教えてください。

我々は、大きく2つの事業を主として実施しています。お客様に尿を郵送で送ってもらい食生活や未病状態を検査する郵送検査事業。そして、もう1つは、食品を一定期間参加者に食べてもらい、健康に対する機能性を研究する臨床試験事業です。

起業の経緯は、名古屋大学農学部名誉教授の大澤俊彦先生(当時同学部の教授)から声をかけていただいたことがキッカケです。「これからは生活習慣のサプリメントもオーダーメイドの時代。その人に合ったものが分かるようにしていかなければ。そのためにはまず自分の状態を知る検査が必要。」そんな大澤先生の話を聞いて、私自身、非常に感銘を受けたので、一緒に取り組ませてもらうことにしました。

血液等を扱う研究開発を行える拠点は限られるなか、周囲の研究機関とも連携しやすいこの「名古屋医工連携インキュベータ」を選択し、現在も入居しています。

Q起業から10年、名古屋に本社として拠点を設けている理由はどんなところでしょうか。

私が起業した当時(2009年)と比較して、名古屋のスタートアップを巡る環境には大きな変化が起きていますね。保守的な土地柄とよくいわれますが、最近は行政も含めて「出る杭を伸ばそう」のマインドに変わってきています
以前「新ヘルスケア産業フォーラム」※の部会長を務めていたのですが、それも行政の方からの推薦があってのこと。30そこそこの若手にそんな機会を与えていただけるなんて、それまでは考えられませんでした。多くの人を束ねるとても良い経験をさせていただき、自分自身の成長にも繋がったと感じています。

  • 新ヘルスケア産業フォーラムは、地域の産・学・官が幅広く連携・協働することにより、新ヘルスケア産業を中部地域の新たな成長産業として創出・育成していくことを地域全体の運動として展開することを目的に、平成24年8月27日に設立された会員制の支援団体です。

人脈づくりの面でも、コンパクトな名古屋の街では事業拡大や資金調達など、会社の課題解決を図るうえで重要な人と出会うチャンスも多いです。また、東京と比較するとスタートアップ企業がまだまだ少ないこともあってか、同じ事業をしても注目されたり、このインタビューのような機会を提供される頻度も高いです。認知度向上のためのコストを十分に支払えない創業期には、これは非常に大きいメリットですね。

採用の面でも、この地域には優位性があると感じています。我々のような研究開発型ベンチャーにとって優秀な研究員の採用は最重要課題ですが、岐阜・三重も含めた東海エリアでみるとバイオ、医療系の学部も多くあります。名古屋で就職したいと考える地元志向の学生も多いので、優秀な人材を獲得しやすいですね。
コロナ禍で様々な仕事がリモートワークでもできると分かってきましたが、我々の検査・研究はやはり拠点がないとできません。その意味でも、この地域での採用面での優位性は魅力です。
こうしたことが、名古屋に本社を置く理由です。

名古屋と東京、それぞれの拠点メリットで事業展開を最大化。

Q.一方で、創業当初から東京にも拠点を構えていらっしゃいますが、どうしてですか?

名古屋は研究開発拠点、東京は営業拠点。当時はまだ今のようにオンラインでの商談なんてなかったですから、営業をかけるならより多くの企業、人がいる東京がいいだろうと。それで創業当初から私自身は東京の拠点に駐在していました。我々のお客様には食品メーカーさんも多いですが、やはり本社機能を東京に置いてらっしゃるところが多いですからね。
あとは、マスメディアの存在です。TVだけでなく雑誌も、東京にいればメールや電話で終わらず、直接会って取材をしてもらえることがあります。名古屋までわざわざは来てもらえません。そうなってはもったいないので、東京にも拠点を構えています。名古屋に本社を残しながら東京にも拠点を置くことで、それぞれのメリットを享受できていると感じています

今では東京の拠点で働く社員も増えたので、コミュニケーションをスムーズに取れるように「まど」と呼ばれるディスプレイを各拠点に設置して、必要に応じて会話ができるようにしています。

Q.さらに海外にも進出されていますが、これはどんなキッカケだったのでしょうか。

企業として雇用を守ることと外貨を獲得することが社会的使命だろうと考えていて、外貨を獲得したいなぁと常々思っていたんです。そこで、ヘルスケアへの興味関心が高い中国(上海)に2018年に進出しました。アメリカに進出するスタートアップはたくさんありますが、みんなと同じことをしても面白くない(笑)。自分たちが先達となって開拓していきたい想いもあり、中国を選びました。

企業成長、その成功事例の集積地、名古屋。

Q.東京、海外と活動を広げられているなかで、名古屋がもっと企業にとって魅力的な街になるために期待するところはどんなところですか?

名古屋はモノづくりをはじめ産業の街。過去からずっと企業を成長させてきた土地なので、スタートアップを中堅にし、中堅から大企業に育てていくノウハウが行政にあると感じます。企業は成長過程で様々な課題に直面すると思いますが、名古屋ではそれらの課題に対する支援策が整っています。我々も海外展開の準備として中国の大きな展示会に出展したいと考えていた際に、名古屋市のサポート事業を利用し、出展させていただいた経験があります。

一方で、先達の経営者とお近づきになる機会はあまりないと感じています。業種は違えどこの地域で成功していった経営者の方々から学べる経営ノウハウはたくさんあると思うので、そのような方々と繋がれるような支援策が地域としてあったらいいなと思います。

あとは、スタートアップ企業を地域の課題解決にもっと役立ててほしいですね。例えば、行政はデジタル化や事業改革が民間と比べて遅れていると指摘されることが多いと思いますが、スタートアップの技術が貢献できる領域がたくさんあるはずです。自分たちの技術が地域の社会課題解決に繋がるとなれば、この地域でビジネスをする魅力がもっと増して成長企業の集積にも繋がるのではないでしょうか。

市民の健康を、客観的な指標で行動から変えていく。

Q.これからの挑戦や夢について、教えてください。

我々の事業ミッションは、「生活習慣のミスマッチをゼロにする」ことです。病院では、「たぶんインフルエンザ」という診断は決してやらない。血液検査など、客観的な指標に基づいて治療をしますよね。ところが、未病・ヘルスケアとなると、口コミやメディア記事から「良いかも」と思って挑戦し、「違ったかも」と残念な体験や飽きで挫折してしまっている方が多いと思います。

未病検査はこのギャップをなくすために、カラダを見える化するツールを一般消費者に提供するものです。医療費の増大も指摘されていますが、未病検査で重症化する前の受診を促すことでもこの課題に貢献できると考えています。
我々単独では難しいですが、名古屋市や他のスタートアップ、そして地元企業との連携によって、市民の健康に対する行動を変えていく包括的なサービスとして開発したいですね。
それが健康寿命延伸の「名古屋モデル」となったら最高だなと、夢見ています。

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